お年寄りの仕事を取り上げると、認知症が進む。

じいちゃんもばあちゃんも、もう仕事なんか辞めて、のんびりすればいい。あとは、私たち子供が一切合切の家事もするから、な〜んもしなくっていいですよ。じいちゃんも、ばあちゃんも、そんなことしてケガでもして、寝たきりになったらどうするの。お願いだから、のんびりして。家事とかは私たちにまかせてください。と言って、お年寄りを強制的に隠居させているお宅って多いんじゃありませんか。

でもね、それがじいちゃんやばあちゃんの生き甲斐を奪って、なんにもすることがなくなったお年寄りが認知症に陥ることが多いのです。とある、農家のおばあさんです。もう年は76歳。おばあさん一人でぶどうを育てている農家でした。3人の息子さんがいるのですが、誰一人後を継ぐものはなく、おじいさんも5年前に亡くなった。でも、おばあさんが育てるぶどうはとってもおいしくって、なかなかの評判だったようです。ところが、ある時、おばあさんがころんでケガをした。骨折には到らなかったのですが、子供たちは大層心配して、ふどうを育てるのは止めなさいと、10本あるぶどうの木を根こそぎ切り倒したそうな。

おばあさんは、大層落胆した。なんにもすることがなくなって、生きることにも張り合いがなくなった。心配した息子の一人が、母親を引き取って一緒に暮らし始めた。でも、家事とかは一切させてもらえない。まして、新しい土地だから、誰も知り合いがなく、人と喋ることもない。ぶどうを育てていたときはあれほど元気だったおばあさんは、だんだんと無口になり、顔つきも変わって、認知症の症状が出始めたそうな。もうそうなってからはどうしようもなくって、やがて施設へ預けざるを得なかったという。元気だったおばあちゃん。おいしかったぶどう。これらはもう取り返しがつきません。お年寄りは貴重な生き字引なのですから、もっともっと元気に働くというか、活動してもらいましょうよ。私たちだって、お年寄りから学ぶことは多いのですから。隠居させたら、認知症がじわりじわりと拡がるのですよ。